SAPIO

  私はけっして小学館の廻し者ではないが、SAPIOの今月号は面白い。特集は「移民と在日外国人」。これからの日本にとって避けては通れない問題だ。移民の是非について識者が持論を展開している。そして、SAPIO編集部も移民によるメリット・デメリットを事例を挙げて提示している。

 是非は分かれても、この問題は長期的な視野で見極めなければならないという部分で識者の意見は共通している。すなわち、政府・自民党の考える「外国人労働者受け入れ」は震災復興や公共事業、東京五輪特需から顕在化した「人出不足」解消という短期的な部分からみた視野の狭いものだという批判である。

 面白いのは右派論客である櫻井よしこ氏や石原慎太郎氏が移民賛成派だったという事である。これは恥ずかしながら知らなかった。さらに櫻井氏は最近話題のレイシズム(排外主義)によるヘイトスピーチを「日本人としての誇りや道徳が欠如していることの表れ」と厳しく断罪し、石原氏は移民時代を迎えた際の軋轢には「私たちは彼らを責めてはいけない。彼らの心細さを理解し、受け入れる寛容が求められます」と説いている。

 SAPIOは昔も今も右寄りな雑誌であるが、やはりレイシズムに関しては許せないようである。特集ではなく、表紙をめくったページに韓国船事故の記事が載っている。そこではSAPIOはレイシズム的な思想を「実に憂うべき病巣」と断じている。まあ、当然のことだが。

 排外主義者が浴びせる罵詈雑言、そしてそれに反対する勢力との衝突は“どっちもどっち”であまりに醜い。我々はいつ、「寛容」という日本人のもつ美徳を忘れてしまったのだろうか。

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