「青山くんって、秋田の出身なの?秋田って行ったことないんだよねえ」。仙台に住んでいた11年間、この言葉を幾度となく聞いたなあ。そんな事を思い出したシンポジウムが秋田市であった。
ノースアジア大学の市民公開講座。シンポジウムのテーマは「観光振興と人材育成」。ノース大には観光学科がある。観光は秋田の活性化にとって不可欠との考えから設置されたようで、地域密着型の大学としていい試みをしているなと思う。観光学シンポジウムは今回で4回目なのだそうだ。以下、パネリストの発言からポイントを紹介。
★石川好氏(作家)
●観光はより多くの人と出会うという見方からすれば、コミュニケーション産業。他者と出会い、異文化に触れて学ぶ。経済面だけでなく、教育や文化面からも大事なコンテンツである。
●観光を含めたまちづくりを行政に頼るな。行政はあくまでサポーター。自分のまちは自分でやろうという意気込みが大事。酒田や長浜は住民主体でまちづくりを行っている。
●私は全国各地を訪れているが、秋田に初めて来たのは12年前だった。それほど秋田は秘境であり、鎖国状態。しかし、だからこそ他地域で滅びているものが残っている。それは例えば無形重要民俗文化財。そこには歴史があり、物語がある。
★穂積志氏(秋田市長)
●(石川氏の発言をうけて)無形民俗文化財を一堂に集めたイベントをやりたいと思っている。「そういうのは神社でやらないと」とか「後継者がいないのに行けるか」とか言われるが、そういう知って頂くための舞台を用意しないと本当に滅んでしまう。
●人口減=消費減という時代にあって交流人口を増やす策は秋田にとって重要。そのための観光政策をやっていく。今は団体旅行から個人旅行へとシフトしている傾向があるので、そのニーズをつかむような情報発信や、商品の組み合わせを考えていきたい。
★木内茂晴氏(読売新聞秋田支局長)
●(出身である千葉からみると)秋田は北海道よりも遠いイメージ。それを自覚すべきだ。秋田に旅行に行く人が満足しないと誰も来なくなる。
●秋田人がそれぞれ「秋田の自慢できるものはこれだ!」というものを持っているだろうか。そこが出発点だ。ますは、自分の足下(部落や町内会)から探してみてほしい。
ということで、非常に示唆に富んだ内容であった。
自分の足下に自慢できるものは必ずある。私にとってそれは清川町の横手川沿いに咲く桜並木。カーブを曲がった瞬間に視界に鮮やかに入ってくる。あれは感動した。そして、商工会議所青年部の先輩がいつぞやの飲み会で「富士見大橋からみた夕焼けがすごくキレイだったのよ。それを見た瞬間、<横手っていいな>と思ったわけよ」と語ったのを思い出した。
市民一人ひとりが“横手の自慢できるもの”にたどりついた時、横手の観光が大きく前進するかもしれない。