高校野球の真髄

 全県少年野球。金沢中も、大森中もサヨナラ負けで残念。が、大舞台で全力でプレーしたことはきっといい思い出になる。お疲れ様。

 高校野球も続々と甲子園へ名乗りをあげているが、「おっ!」と思ったのが、昨日茨城大会で初優勝した水城高校。ここの山野隆夫校長は高校野球に深い思い入れをもっている。ジャーナリストの軍司貞則氏の著書「高校野球<裏>ビジネス」にそのエピソードが書かれている。

 高校球児だった山野氏は定時制の水戸南高校で、前任者から懇願され、野球部の監督を引き受けた。しかし、部の環境や、部員のレベルは草野球よりひどかった。

 「こんなんで、まともな野球はできない」山野氏は頭を抱えた。しかし、不思議と部員たちは毎晩、一所懸命に練習していた。その理由を聞くと返ってきた答えは・・・

 「夏の大会前には新聞に、出場する学校の選手紹介が載る。その時、父ちゃんや、母ちゃんがオレの名前を見つけるかもしれねえと思って」

 部員たちのほとんどが、身寄りのない子どもたちが集まる施設から通っていたのだ。新聞に名前が載り、それをみた父親、母親が会いにきてくれるかもしれない。そのために懸命に野球をやっている。昼間の仕事を終え、夕方の授業を終え、疲れた体で、練習をしている。

 山野氏は部員たちのために行動を開始した。母校の水戸第一高校などをまわってボールを集めた。寄付を集めてユニフォームもつくった。明るい時に練習をさせてあげたい、と朝練も行った。

 その練習を毎晩遠くから見つめている男がいた。新聞記者の井上明氏。かつての松山商業高校のエース。そして、三沢高校の太田幸司との延長18回引き分け再試合の投げ合いを制し、甲子園の優勝投手になった人物である。その野球エリートが定時制野球部の練習を見に来ていたのだ。

 「見てる人は見ている。これが高校野球の真髄だ」と山野氏は思った。その夏、水戸南高校は初戦、0-38の5回コールドで姿を消した。しかし、山野氏は少しも恥ずかしくなかった。むしろ、誇らしかった。部員が全力でプレーしたことに。

 「学校運営に高校野球は絶対必要」山野氏の信念はここから生まれたのである。

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