安倍元首相が凶弾に倒れ、亡くなられました。襲撃されたとの第一報を知ったのは、会派の研修視察で大分県を訪問した最終日、昨日のお昼前でした。その後、秋田へ向かう経由地の羽田空港では多くの人々がテレビに釘付けとなり、安否を気遣っていました。しかし、午後5時過ぎ、奥様の昭恵さんが奈良県立医大病院に到着して間もなく死亡が確認されました。
このブログを読んでいただいている方はご承知だと思いますが、私は安倍氏が行ってきた政治に対して全体的に批判的な立場をとっていました。思想信条や政治姿勢の多くで相容れない部分があったからです。
しかし、これもおわかりかと思いますが、少なくとも外交の分野においては評価をしています。「地球儀を俯瞰する外交」を掲げて多くの国々を駆け回りました。中国に対しても「対話のドアはいつでも開けている」との姿勢で臨みました。中でも評価したいのは、平成27年の年末に当時の岸田外相を韓国に派遣し、慰安婦問題での電撃的な日韓合意を果たしたことです。右派という立場の一方で、リアリストとしての顔をみせました。
また、労働政策においてはアベノミクスの恩恵を行き渡らるために、政権主導で経済界に賃上げを要求し国民生活を向上させることを目指しました。そして、ほとんどの政治家が関心を向けなかった頃から一貫して北朝鮮による日本人拉致問題に取り組みました。
様々な評価があるにせよ、難病を抱えながら長期にわたって“首相”という孤独な仕事に向けあい、自らが理想とする国づくりに邁進してこられました。そんな存在感のある政治家を失ってしまったことは本当に残念でなりません。
マスコミはこの事件を受けて、「民主主義の危機」を語っています。それは政治への信頼の低下と比例しています。私を含む“政治家”と呼ばれる仕事に就いている人が改めて肝に銘じなければならないことは、「真摯」であるべきだということです。誰もが出るであろう感情をむき出しにせず、相手の意見も受け入れながら議論する。その姿勢を一票を投じていただく有権者に、そして未来を背負って立つ子どもたちに見せなければなりません。
秋田で何度か飲んだマスコミ関係者が東京に異動し「官邸番」になった後、電話で話す機会がありました。「安倍さんってどんな人?」という私の問いかけに「とってもいい人です!」と答えたのを思い出します。国会での強気で挑戦的な答弁だけでははかれない、気さくで思いやりの深い人だったんだなと思います。
安倍晋三元首相のご冥福を心からお祈りいたします。