大学時代に「原爆の父」J・ロバート・オッペンハイマーについての授業を受けていました。科目は(たしか)地理学概論なのですが、阿武隈山地への遷都論を唱えていた担当の故・村山磐教授が彼に関する評伝を著していて、それをテキストにしながらの講義でした。今考えればなぜ地理学とオッペンハイマーが結びつくのか謎ですが、当時は単位を取るのに必死でそれどころではありませんでした。
昨日、大曲でアカデミー賞で作品、監督など最多7部門の賞を獲得した「オッペンハイマー」を鑑賞しました。広島・長崎で未曽有の犠牲者を出した原爆製造の責任者の心情を描いたものですが、ストーリーの軸は戦後に水爆実験の是非をめぐり確執を深めていったアメリカ原子力委員会のルイス・ストローズ委員長との対立で、そこらへんは予習していかないとさっぱりわからないかも。
村山教授の授業や著書により、オッペンハイマーが原爆投下の惨禍を重く受け止めて戦後は軍拡競争に深い懸念を示したことは知っていましたが、この映画でも彼の苦悩が十分伝わります。
今もなお「これ以上の犠牲者を出さないために戦争を早く終わらせる必要があった。だから、原爆投下は正当だった」という世論が残るアメリカにあって、このような作品が出たことはとても意味あるものだと思います。