全若東北ブロックの研修会の会場は必然的に東日本大震災の被災地が多くなります。そういうことで、私としても定期的に被災地を訪問できます。26日~27日は石巻市での研修会でした。
研修①は市役所と隣接している、というか渡り廊下でつながっている防災センターで「東日本大震災以降の防災・減災の取組について」。
死者3184名、行方不明者417名、住家の76%が被災したという石巻市。本庁舎が津波により孤立し、沿岸部の2つの総合支所も壊滅状態となって初動対応は遅れてしまったそうです。やっと復旧業務ができるようになったのは津波の水が引いた3日後。職場の長机を使って道をつくり、対応したとのこと。
大震災の反省を踏まえて石巻市が取り組んでいるのがまず、情報伝達手段の多層化。防災行政無線はもちろん、衛星電話、防災ラジオ、SNS、緊急速報メール、Wi-Fi等、あらゆるコンテンツから災害情報を受け取ることができるような体制を整えています。維持管理の関係から災害情報専用のものより、日常的に使用しているものの方が活用価値があるというお話でした。
そして、住民の皆さんの危機意識と今後の共助についても重要な部分だそうです。市民調査をしてみると、震災直後の住民の初動は遅く、「津波が来ると思わなかった」ため、実に46%の住民が津波が来るまで避難をしていませんでした。ここに、経験によるイメージの固定化→自らの命を守る能力が低下していたとの分析ができます。「まずは逃げる」という行動意識の強化が必要です。
共助に関しては、避難所運営に課題があったことから、「地域防災連絡会」という組織をつくり、例えば避難所となっている学校をすぐ開けられるように、町内会がカギを持っているというケースもあるようです。また、防災士の資格取得費用を全額補助することによって、約200名の防災士が誕生、防災士協議会が設置されるなど地域防災力の向上に取り組んでいます。
震災時に8名だった石巻市の防災担当は震災後、2課29名と大幅に体制が強化されました。防災は行政が最も“人とお金をかける”分野の一つなのでは・・・ということを認識しました。
研修②は石巻市水産物地方卸売市場へ。水産関係における震災からの復興状況と課題について説明を受けました。震災によって魚市場も水揚棟が崩壊しましたが、5年前に「高度衛生管理型」として生まれ変わりました。
東洋一といわれる長さを誇る荷捌き所。
水揚げの回復状況は数量としては、震災前までには至ってないものの、金額が100%近い状況に戻っています。水産加工に関しては、平成30年のデータで数量69%、金額87%まで回復しています。が、原料や販路がない、雇用が集まらないといった課題が残っているそうです。特に雇用状況は深刻で、震災前と比較して約半分、それに有効求人倍率が高いこともあって苦戦が続いています。これを受けて、外国人技能実習生の受け入れ拡大を進めているとのこと。ですが、新型コロナウィルスの影響で心配ですね・・・
研修③はJR石巻駅から徒歩で行ける距離にある「かわまち交流拠点」の施設整備について。
かわまち交流センター「かわべい」。立体駐車場も含めて石巻市観光協会が指定管理者となって運営しています。Y2ぷらざをしたコンパクトにした施設とイメージして下さい。
いしのまき元気いちば。こちらは(株)元気いしのまきが運営。鮮魚、水産加工品、農産品、土産品等の販売とフードコートがあります。
交流センターの今年度入館者数は約12万人で前年度対比347.6%の伸びだったそううです。また、立体駐車場ですが、2時間無料にした結果、これも前年度対比206.2%増の収益をあげています。中心市街地や石ノ森萬画館に近いという立地なので、ここに車を停めてテクテク歩いてまちを楽しむというパターンがみてとれます。駅東口再開発事業の参考にもなる事例です。
交流センターの屋上から石ノ森萬画館が見えます。
横手に帰る途中、ある慰霊碑に立ち寄りました。
4歳から6歳までの園児5名が津波による犠牲となりました。
この世には、生きることが叶わなかった命が数多くあるということを被災地は教えてくれます。