一宮市は名古屋市と岐阜市から10数キロの位置にある人口約38万人の街である。昔、国司が着任した際に最初に参詣した真清田神社が「一の宮」と呼ばれていて、それが地名となったそうな。
ここでは「市民が選ぶ市民活動支援制度」を研修した。市が市民活動団体が実施する事業に対して支援金を交付するのだが、その額を18歳以上の市民の投票結果により決定するという制度だ。似たような制度は一昨年、会派で視察した千葉県市川市やお隣、岩手県奥州市などでも実施されている。
市民1人あたりの支援額は571円(23年度)。支援したい団体を最大3つまで選ぶことができるが、1つもない場合も投票でき、それは基金に回されるという。投票率は23年度は10%。「低い」という印象だが、この数字、実は他市よりも高いのだという。
100以上の市民活動団体がエントリーしているが、目標額に届いた団体もあれば、遥か及ばず事業実施を断念した団体もある。「競争により、市民活動団体を活性化させる」という観点からみれば非常に面白い取り組みだ。
が、そもそも目的は「市民活動に対する理解、関心を深めてもらう」こと。そういう意味からすれば投票率10%というのは、はっきりいって一部の市民活動団体関係者周辺の方々が投票しているに過ぎない、という見方もできる。さらにいえば、これは「選挙」である。その団体自体が組織力があり、主要メンバーの中に相当な人脈を持った方がいればその団体の事業はたやすく「当確」となる。しかし、得票数が多い=いい事業という公式は成り立たないのではないかという疑問もある。
一昨年の会派視察で、私はその事を質問した記憶がある。市川市の場合は割り切った考え方をしていた。しかし、一宮市では問題点として受け止めているようだ。私なりにこの制度がうまく機能した場合の最大効果は「ほとんど活動実績のない団体は淘汰されていく」ことだと思っている。だから、市民活動団体にとっては歓迎すべき制度ではあり、逆にいえば「実績」が問われるきつい制度でもある。