競争より、共創

 ようやくノートPCを買い替えました(ついでにプリンターも)。久しぶりにPCからブログを書いています。

 昨日は待望の東大公共政策大学院・金井利之教授による「地方創生」を学ぶ研修会第二弾が開催された。今回の対象者は議員と市職員。お題は「<地方創生>と政治基盤の再構築」。長いが以下、要旨を記す。

◆「地方創生」の限界
●増田寛也氏の関心は実は地方ではなく、東京にある。地方からの人口流入がいずれ枯渇すると東京の経済・人口成長は消滅する。増田氏はそれを危惧している。東京の経済成長が維持されれば日本は何とかなるだろう、が増田氏の真意。

●人口減、若者減は間違いない事実。その総量は既に一定、それを「移住」で地方自治体が奪い合ってもゼロサム競争でしかない。

●しかし!それによって、まれに「成功」した自治体があれば、自助努力の「実証」という見世物ができる→国の政策は間違っていない。努力しない自治体が悪いという言い訳が成立する。

●しかし!ほとんどの自治体が成功しないのは明白(ゼロサム競争だから)。地方がやるべきことはこんな蟻地獄競争から抜け出して、全自治体が共創・連携すること。

◆経済基盤
●「国土の均衡ある発展」はアメリカ経済に支えられてきた。しかし、プラザ合意によって内需主導に転換。バブル崩壊と共に泡と消える。

●橋本・小泉政権は構造改革=規制緩和により、リストラ・価格破壊を促進。新しいサービスを生み出さない規制緩和は害毒でしかない。

●アベノミクスの「成長戦略」は橋本・小泉(竹中)構造改革路線の残滓なので不幸にも労働規制緩和しか思いつかない(おそらく、同一労働・同一賃金は非正規社員に合わせるだろう。意味なし)。

●少子高齢化時代の実需は「老人介護保障」と「子育て保障」の2つ。そのためには強い財政→強い社会保障→強い経済の確立が急務。

●重要なことは全国レベルで、普遍的で公平な「社会保障経済」体制を構築すること。介護保険料や高等教育費負担のばらつきをいかに公平にできるか。

◆政治基盤
●昔は地方(地元)で生まれ育った国会議員が地方に利益誘導をしてきた=国土の均衡ある発展を支えた。しかし、今の国会議員は地方(地元)との紐帯意識が希薄で「大都市圏重視」の体制になっている。
例)安倍晋三 東京生まれ、小中高大と成蹊
  谷垣禎一 生まれは地元だが、中高と麻布
  麻生太郎 生まれは地元だが、小中高大と学習院
  石破茂  東京生まれ、高大と慶應
こうした方々は地方(地元)の陳情・要望に応える感性を持たない
人格形成に非常に重要な中高時代をどこで過ごしたか?は地元のために一所懸命に仕事をする、しないの見極めポイント。

●小選挙区制は圧倒的に巨大与党有利なので、政治家間の競争がない=利益誘導しない。さらに人口比例と称して定数是正で大都市圏重視。

●大都市圏住民と地方圏住民の紐帯を回復しなければ「地方」の政治基盤は崩壊の一途。

●中長期的対応として「大都市圏在住人口のうち、地方圏に紐帯・理解を持つ人を作る」=中高生を地方圏に留学させる。その子たちが進学・就職で大都市圏に戻るが、その時に効果を発揮する(地方の苦境を他人事だと思わない)。だから、中高統合は愚の骨頂。

◆まとめ
●地方自治として当然のごとく地方活性化策は進めなければならない。しかし、現在の構造改革=大都市圏重視体制のもとでは失敗に終わることは不可避。

●負けるとわかっている戦いをやめるという、脱競争=共創→全自治体で社会保障経済=格差是正体制をやるしかない。

 金井先生は中央集権体制が続くことを前提に論を進めている。おそらく、国の体制はそれがベストというのではなく、地方主権など机上の空論というお考えなのだと思う。さらにいえば、中選挙区論者である。講演後の懇親会の席で「政党が競争するのではなく、政治家が競争しなければならない」と話されていた。

 そういう意味で地方主権論者であり、小選挙区=政権交代論者の私とは明らかに立場が違うが、なぜか先生の話にはものすごく共感できる。それは多分、先生のお話の芯には「弱者」に寄り添う心があるからだと思う。政治は弱い人のためにある。その思想が先生の根底にあるからなんだと思う。

 聴かせたかったですね、三役に。

P.S.甲子園春夏7回の優勝、通算96勝。PL学園野球部の「最後の夏」が終わりました。あの憎たらしいほど強かったPL休部の報に時代の移り変わりを思わざるをえません。ラストゲームは「逆転のPL」の名に恥じないナイスゲームだったようです。昭和59年夏の準決勝、金足農との手に汗にぎる戦いは忘れることができません。寂しくなります。

 

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントは受け付けていません。