新潟市は人口約80万人の政令指定都市である。仙台市よりも人口は少ないが、なんとなく新潟市の方が日本海側なのにあか抜けている街という印象を受けた。ちなみに、杜の都・仙台に対して、新潟は「水の都」と呼ばれているそうな。
新潟市では初日と三日目(最終日)、農業についての研修を行った。まずは初日は「ニューフードバレー構想」、「国家戦略特区(農業特区)」、「田んぼダム」について。
首都圏から2時間の上越新幹線、関越道・北陸道・磐越道・日東道の結節点、東アジアと直結する新潟空港、物流・エネルギー基地の新潟港とまさに日本海の拠点都市として発展している新潟市。平成17年の合併前は「港町」のイメージが濃かったというが、合併後は耕地面積や米産出額、認定農業者数など農業力が全国トップクラスとなり、もともと持っていた食品製造力(亀田製菓、ブルボン、三幸製菓、佐藤食品工業など)、そして新潟大農学部をはじめとした産学官のネットワークを活かして、平成23年、「新潟ニューフードバレープロジェクト」が始動した。
そのビジョンは「食産業NO.1都市を目指し、フードデザインをひろめ、新たなネットワークを(連携)を創り、イノベーションを起こし続ける」。フードデザインとは、商品企画・開発・製造・販売までをトータルでデザインする、いわば“食の売れる仕組みづくり”の構築である。
プロジェクトは「農商工連携と6次産業化」、「フードデザイン」、「ブランド力情報発信」、「食品リサイクル」、「高度な技術研究・人材」、「食産業集積・創業」の6つの戦略からなり、それぞれ取り組みを進めている。
そして、プロジェクトの発展のために手を挙げ、承認されたのが“大規模農業の改革拠点”を目指した「新潟国家戦略特区」である。これによって今、多くの企業が新潟市と連携しようと動いている。ローソンは若手農業者の支援として全国初の特例農業法人をつくり、新潟クボタは海外に向けたコメ輸出に取り組む。他にもセブン・イレブン、JR東日本も特例農業法人をつくった。さらにはICTを活用した革新的農業の実践でパナソニック、IHI、電通、NTTドコモなどが参集している。まさに新潟市は農業分野への参入を図る企業の実験場と化しているし、新潟市も「企業の強みを農業に活かす」と割り切っている。この割り切りようがすごいと思う。
そう、新潟市は“攻める”立場で地域の農業の将来性を描いている。そして、教育委員会のカリキュラムに小学生の農業体験を組み込み、後述する農業活性化研修センター隣地に教育ファームをつくったり、地域のおまつりなどの受け手(担い手)確保を見据えた「一集落一株式企業化」をも打ち出している。その一つひとつの事業目標が明確である。
この研修での担当者の言葉をいくつか紹介しよう。
●補助金ではなく、規制緩和で環境を整える。
●農家の持っている商材をどう使うかは行政が考えることではない。農家が考えることだ。
●何がブランドか?答えはない。
●大田市場で「ウチは日本一です」は通用しない。市場でトップセールスも意味がない。
●ブームは失敗する。スーパーの棚を取ることが大事だ。継続的に買ってもらうためにどこを支援していくのか、を考える。
一本筋が通っている。新潟は農業から離れられないのだという。だから「農業を核に地方創生のトップランナーになる」と決意した。そして、その覚悟を感じた。
長くなったので、ここから簡潔にいきます。
「田んぼダム」は佐藤清春議員こだわりの事業である。田んぼの特性を活かし、排水路の急激な上昇を抑え、大雨の際の浸水被害を軽減させる仕組みで、コストが安価で工期が短いのがメリットだ。新潟市ではモデル地区で効果検証を実施しており、浸水地域を11.7%、浸水量を24.9%減少させたという結果が出た。
この田んぼダムは上流側の取り組み効果が下流側であらわれるので、取組者と効果享受者が違う。なので、地域の農家の共通認識が求められる。写真は新潟市が独自に開発した田んぼダム桝の説明場面。
佐々木誠議員、齋藤光司議員、清春さんが並々ならぬ関心を持って聞いていた。それぞれ、上流側、中流側、下流側。
最終日の三日目は「よこて農業創生大学事業」の参考とするべく農業活性化研究センターを視察した。
平成25年にできたこの施設、まだまだ手探りの部分も多いというのが率直な感想だが、「ニューフードバレー構想」の一翼を担うものでもあり、「つくったものをいかに高く売るか」という目標の下、試験栽培エリアと研究棟に分かれ取り組んでいる。互いに情報交換をしながらより良い施設・事業にしていきたいものである。