公共施設特別委行政視察その①~盛岡市~ “行政マンの矜持”

 盛岡市では公共施設の適正化の取り組みを「アセットマネジメント」と称している。横手市では「ファシリティマネジメント」としているが、まあ、どちらも同じ意味でしょうね。盛岡市ではその「公共施設アセットマネジメント」と「盛岡バスセンター跡地の活用」について研修した。

 まず、アセットマネジメントである。取り組みの肝を一言で言えば、“市民と一緒に考える”ということに尽きる。この取り組みは平成21年度に策定した「自治体経営の指針及び実施計画」から始まっている。自治体経営、こういう概念を大事にしている地域は強い。そこから平成27年度に「公共施設保有最適化・長寿命化中期計画」とその実施計画を策定するまで、市民討議会・市民フォーラム・市民意見交換会・市民説明会と、この計画を理解してもらうために幾度となく盛岡市民と向き合う機会をつくっている。

 盛岡市の計画は施設の種別ごとではなく、地区ごとに「施設カルテ」を作成して、そこに記された細かいデータを示して進めているのが特徴なので、各地区で開催する意見交換会や説明会はその点で有効な議論をすることができる。また、討議会は行政だけでなく盛岡青年会議所(JC)と共催するなど第三者の視点も活用するという工夫も行っている。

 興味深かったのが人材活用。盛岡市は岩手県立大と協定を結んでいるが、平成22~23年度にそこにあるシンクタンク「盛岡市まちづくり研究所」に派遣され、調査研究をした市職員が資産管理活用事務局(現・資産経営課)でずっとこの計画推進にあたっている。この部署に配属された職員は“財政に強い”人材であり、簡単に他部署に異動になることはないという。効果的な人事という点で大いに参考になる話だ。

 「盛岡バスセンター跡地の活用」。昭和35年に建てられたバスセンター(ターミナル)は盛岡市のシンボルのひとつだった。しかし、昨年、老朽化の理由で運営会社が撤退・廃止を決めたため、盛岡市が「バスターミナル機能の維持」優先ということで今年に入り土地を取得している。今後は公民連携方式(PPP)を基本に跡地活用策を考えていく予定である。

 バスセンターはレトロ感たっぷりの建物であるがゆえに建物そのものの保存運動が起こったほど市民の愛着は深かった。だからこそ、運営会社が撤退を決めてから、市が土地を取得するまでの間、市民から出される様々な要望に市は向き合ってきたそうだ。ここにも自分たち(行政)の机上で考えるだけでなく、“市民と一緒に”考えていこうという姿勢が表れている。

 今後は具体的に再整備事業を検討していくことになるが、あくまで「バスターミナル機能の維持」を第一として考えていくそうである。身の丈の整備を目指すといったところか。“自治体を経営する”という感覚が出ていて素晴らしい。

 アセットマネジメントの説明で印象に残ったのが「いかに市の方針を説明し切れるか」という市職員の言葉。そこに“市民と向き合ってきた”自信と行政マンとしての“矜持”をみたのであった。

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