学術・研究都市として知られるつくば市は茨城県の南部に位置している。日本百名山のひとつ、筑波山を擁する観光地でもあり、つくばエキスプレスの開業によって東京都心までは最短45分で行ける。
「みずほの村市場」は4年前の「全国直売所甲子園」で優勝した、いま注目の直売所である。理念や取組みについて運営する㈱農業法人みずほの長谷川久夫社長のお話を伺った。
長谷川氏の理念は明快である。「農業を産業にしないと未来はない」という危機感、そして、「生産者視点」で考えていくこと。みずほの村市場では、委託販売契約を交わした農家が自ら農産物の価格を決めることができる。代わりにその農産物には品質や安全・安心など社会的責任をきちっと持たせる。そして権利金や、違約金、報奨金などの一定のルールを設けて競争させる。これが産業であり、農家が自立する方策でもある。
全国には約2万3千の直売所があるが、一農家当たりの平均売り上げは年間約80万円なんだそうだ。みずほの村市場が契約している農家の平均は約800万円。10倍である。ここの農家は自分で納得できないものを売ることはしない。品質に責任を持てるから、お客さんは信頼して多少高くても買ってくれる。お客さんもレベルアップしているのである。「農業を理解した人だけ買ってくれればいい」ということなのだ。強気というか、傲慢というか・・・だからこそ、ここではすでに農業を産業にしているといえる。
今も昔も農業は補助金漬けである。だから制約も受ける。自己主張して自己責任をとるシステムになっていない。農業は努力したことが報われるものになっていない。その一言、一言が私たちの胸に突き刺さる。「農家は足し算しかできない」。とうとう某先輩議員がうつむいてしまった。
農業者にとってはいろいろと反論したい考えであることは間違いない。しかしながら、「TPPが成立しようが、アメリカにFTAを押し込まれようが、ここは残るかもしれない」と私は思った。そう思わせる長谷川氏の強烈な個性があった。やはり、「人」である。
競争ながらも生産者視点。そこには農家を継いだ時に長谷川氏が感じた「自分でつくったものを自分で値段をつけられないのはおかしい」という単純な想いがある。そこから、みずほの村市場は始まった。
では、行政や政治は何もやらなくてもいいのか。否、である。実は長谷川氏は議員経験がある方である。私たちの役割は「環境をつくる」こと。意欲のある農家、農業法人がその地域で頑張れる、その頑張りが報われる環境をつくっていくことだ、と語ってくれた。
農業の、明日はどっちだ!?
敷地内にあるお蕎麦屋さんでおいしい蕎麦を手繰りながら、未来に想いを馳せた。