新居浜市から西条市、今治市を経由してしまなみ海道を渡った中国地方の入口が人口約13万6000人の尾道市です。「坂の街」、「映画の街」、「文学の街」として全国的に知られています。
尾道市の御調(みつぎ)地区にある公立みつぎ総合病院は「寝たきりゼロ作戦」と銘打って保健・医療・介護・福祉を合体させた、いわゆる「地域包括ケアシステム」を確立させた先駆的な病院。その運営は市立大森病院も参考にしたといわれています。
今回はその取り組みを現地視察を兼ねながら改めて勉強し、今後に活かしていこうという研修でした。
公立みつぎ総合病院
お忙しい中、沖田光昭病院長に時間をとっていただき、説明を受けました。「みつぎモデル」と呼ばれる病院を核とした地域包括ケアシステムは住民の全世代を対象としています。病院に保健福祉センターを併設し、地区内にある保健福祉総合施設(老健施設・リハビリセンター・特養ホーム・ケアハウス・グループホーム・デイサービス)と緊密な連携を図りながら“住民のための”運営を行っています。
苦労しながらも常勤医を確保し、事務職員も市ではなく、病院採用。実働の保健師9名は御調地区の7つの集落をそれぞれ担当してきめ細かな対応をしているなど独自色を発揮しながら毎年のように黒字経営を続けているそうです。
昭和49年から始まった「寝たきりゼロ作戦」は10年後に効果が現れ始め、平成30年の在宅寝たきり高齢者の割合は広島県平均の2.5%に対して1.0%と半分以下。驚くべき数字です。
沖田院長からは様々なお話をお聴きしましたが、特に印象に残ったのは「<人>をみる医療・介護」ということ。本人(患者・利用者)の意志を尊重し、例えば医師だとしたら、医療だけでなく、介護や保健などの視点も加味して接していかなければならない。それがあって初めて地域包括ケアシステムが成り立つのだそうです。そうした地域福祉に関わる“人”の正しい育成というものも重要な課題だと感じました。