しんがり

 1997年11月。日本の金融業界は大激震に見舞われた。3日に三洋証券が破たんし、戦後としては初めて証券会社が倒産した。17日は「たくぎん」の略称で知られていた北海道拓殖銀行が破たん。そして、22日は国内四大証券のひとつであった山一証券が2600億円という簿外債務が決定打となって自主廃業に追い込まれた。

 26日には私が当時住んでいた仙台の第二地銀、徳陽シティ銀行が破たんした。その日の私は休日だったので、社員寮から一番近い徳陽シティ銀行の支店の前まで行ってみた。予想通り、多くの顧客でいっぱいだったのだが、さほど大きな混乱はなかったという記憶がある。それでも、「これからの日本はどうなっていくんだろうな・・・」という漠然とした不安がよぎり始めたのもこの時からである。

 「しんがり」は山一証券が自主廃業を発表した後、債務隠しの真相究明や清算業務といった会社としての“けじめ”をつけるべく、最後まで残った12人の社員たちの物語である。プロローグには当時の野沢正平社長が記者会見で涙ながらに「社員は悪くありませんから!悪いのは我々なんですから!」と絶叫したその本当の意味も綴られている。

 “終身雇用と年功序列”という「日本株式会社」の終わりの始まりであった1997年11月。一億総中流時代が過ぎ去って、日本はいま、「グローバル・スタンダード」というよくわからない横文字の渦に飲み込まれ、格差社会が広がっている。希望を見いだせない社会となった日本だが、この本はそんな時代を生きる私たちにヒントを与えてくれる何かがある。

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